+Want your lips+               -side Duo-





何気なく上げた視線の先に映ったアイツ。

画面を見続ける目はそのままで、片手でカップを掴み口に近づける。

口を少し開きコーヒーを一口飲んで、またカップを横に置いた。

オレはキーボードを打つ手が止まり、その一連の動作に釘付けになった。










ここはプリベンターの本部で、自分は仕事中で、まだ陽も高い。

周りには職員が同じようにキーボードに手を掛け、画面を見つめている。

時折、談笑が聞こえてくるそんないつもと代わり映えしない風景。

それなのになんで自分はそんな事を考えてしまったのか……。

アイツとキスしたい…なんて。

キスなんてもう数えきれないくらいアイツとしてる。

なのになんで今そんな事を思ってしまったのか。

きっと、コーヒーを飲み終えた後のアイツの唇が艶っぽかったからだ。

だから……その濡れた唇に触れたいと思ってしまった。

でもここは職場で、周りには人が沢山いて、そんなこと出来るはずがない。

それにもしここに二人っきりだとしても、自分からキスしたいなんて……言える訳がない。

そう、自分からは言ったこともないし言われたこともない。

いつもそれは突然にやってきてオレを驚かせる。

朝起きた時だったり、休みの日に雑誌を読んでる時だったり……。

もう何気ない日常の1コマに溶け込んでしまっているその行為。

今更恥ずかしくて言えない。

今すぐアイツのキスが欲しいなんて……。

視線は唇に釘付けで、キーボードを打つ筈の手は止まったままだ。

それを訝しく思ったのか、同僚が話しかけてきた。

「デュオ、さっきからフリーズしてるけど大丈夫か?」

「あ、ああ。大丈夫。」

その声に視線の先の相手がこちらを向いた。

それに慌てて視線を外し、画面に向かってキーを打つ。

けれど、打ってる内容は目茶苦茶でエラー音が辺りに響いた。

もしかしたらアイツを見ていたことがバレたんじゃないか?

そう思うと今自分は少し動揺しているのかもしれない。

アイツの唇を物欲しそうに見ていたことがバレたんじゃ?

そんな事を考えると居ても経ってもいられなくなった。

「悪い、ちょっと休憩してくる。」

すぐ戻ると付け加えて、オレは素早く立ち上がり部屋を出た。

同僚が何か言いかけてたけど、それはもう聞こえなかった。















少し足早に屋上を目差した。

気持ちを落ち着けるには外の空気を吸うのがいいと思ったからだ。

屋上の扉を開いて辺りを見回わしたけど、そこには誰もいなかった。

ちょっとほっとしながら奥まで進み、フェンスに背中から体重をかけて空を見上げた。

はぁーと溜め息をついて心を落ち着ける。

毎日してる事なのに、何で仕事中にあんな事思うかなーオレ。

でもよく考えたら自分からしたことってないよな。

いつもはそんな事考える前にアイツが勝手にしてくるから。

もしかしたらオレって顔に出てるのかな。

それはそれで嫌だなと思っていたら、屋上の扉が開く音がした。










「お前も休憩か?」

多分さっきのオレの態度を不審に感じて追ってきたんだろう。

「ああ。」

そのままオレの隣りまで来て立ち止まった。

………相変わらず会話はない。

今なら誰もいないし、思い切って言ってみようか。

そんな考えが浮かぶけど、やっぱり今更言うのは恥ずかしい。

折角落ち着こうと思って来たのに、コイツが来たんじゃ意味がないよな。

このまま何も話さないのも何だし、先に戻るか。

そう思って切り出そうとした矢先に名前を呼ばれた。

「デュオ。」

返事代わりに振り向いたその先に、あの艶やかな唇があった。

それを認識した時にはもうそれは離れていて、何だか物足りなさを感じた。

「いきなりするなよな〜。」

ビックリするだろ、と続くはずだった言葉は二度目のキスに遮られた。

今度はさっきよりも長めのキス。

軽く触れ合うだけの優しいキス。

自分はコレが欲しかったんだなって思わせられるキス。

やっぱりコイツは分かってるんじゃないかと思う、オレがキスしたかったことを。

「いつも突然だよな。」

「したいと思ったからするだけだ。」

そんなオレの問いかけにもしれっと返すアイツ。

したいと思ったからか……コイツもそんなこと思ってするんだな。

それじゃあオレと同じこと考えてたのか。

「なんだ、そうだったのか。」

「?」

思わず口から出た言葉に何の事だ?と目が語っている。

「オレもお前とキスしたかったんだよ、ヒイロ。」

そう言って、俺はヤツのネクタイをくいっと引っ張って自分から触れるだけのキスをした。

「へへっ、これでお相子だろ!」

少し照れながら言い放った言葉に、優しい眼差しが返された。

「そろそろ戻ろうぜ!」

「そうだな。」

いつも真っ直ぐなヒイロ。

自分も偶には素直になってみるのも悪くない。

澄んだ青空のように自分の心も晴れやかになった。










あとがき
何気ない毎日の中で、ふとした瞬間に「キスしたい」って思う時があるはずだ!
ってな事で出来上がったブツ(^▽^;)
デュオの性格がだいぶ捏造されてるけど気にしないでください(汗)
最近カッコイイ男前デュオもどきできてたので、今回はちょっと可愛らしく(?)してみました。←失敗だろ(-_-;)
すっかり甘い話の書き方を忘れているので、リハビリだと思ってくださいませ〜m(_ _)m

こういう書き方の時は必ずヒイロバージョンがあったりする……はずだよ(笑)

2006.07.12   葵